猫騙は、元WANDS、元al.ni.coの上杉昇がヴォーカルを務める、エスニカル・ファンクロックバンド。彼らの奇抜なメイクやエキセントリックなファッションだけを見て、聴くことを躊躇っているそこの貴方。このあまりにインパクトの強いビジュアルは、まさに相撲の立ち会いで「猫騙し」に遭うという一瞬の驚きを生み出しているだけなのである。まずは猫に騙されたと思って音を聴いてみて欲しい。そこには、オルタナティブであるがオーソドックスかつどっしりとした技で攻めて来る猫騙の真髄がある。気がつくと、力強い突き押しと的確な寄りで土俵際まで押し込まれているのである。
上杉昇は、WANDS時代の1993年度に、シングル・アルバム合わせて700万枚を超えるという、今となっては驚異的なセールスを記録して第8回日本ゴールドディスク大賞を受賞した。しかしその頃は、華やかでありながらも自らの音楽性を押し殺していた時期だったという。あれから早17年の時が過ぎた。今の彼はあの頃を特に懐かしむでも無く、過去を過去として冷静に捉え、インディーズレーベルに所属しながら、自分の信じるあるべき音楽の姿を真摯に追い求めている。それは、ある意味不器用であり、不格好なのかも知れない。でも、そこには、ガンズ・アンド・ローゼズや、ニルヴァーナといった洋楽ロックに魅せられた一人の音楽好きが、「歌うたい」として表現を続ける姿があるのである。外から何を言われようと自らが美しいと思えるものを押し通し続ける彼の姿は、タイアップ全盛期から続く現代日本の音楽シーンへの一つのアンチテーゼとして、この2010年という時代にも存在し続けている。
今回の作品『miya38 tribute songs』は、2009年9月4日に原発不明がんで亡くなった、猫騙のベーシストを務めていたmiya38こと宮沢昌宏に捧げるトリビュート・シングル。miya38は、上杉昇がWANDSで初めてライブを行った際にサポートベースとして参加したのがきっかけで出会った、ある意味腐れ縁的な盟友であり、長きに渡って苦楽を共にしてきたかけがえのない仲間であった。今回のシングルでカバーしている3曲は、miya38がベースヴォーカルを務めて1994年から2002年まで活動していたthe fantastic designsというバンドの、ファンク・ロックを基調とした、粘っこくうねるベースがめちゃめちゃクールな原曲。消えていく曲が星の数ほどある中で、このような芯のしっかりした個性的な楽曲が後世に残らないのは、あまりに勿体無い。上杉昇を始めとする猫騙メンバーが故人を偲ぶ心が、この曲達をこの世に蘇らせたのである。その深く濃い魂達が生み出したこの作品に、一度触れてみて欲しい。このシングルの売上の一部は、miya38の遺志を汲む形で、がん基金に寄付される。
(文 : 阿部 彩人)
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MAXI SINGLE
『miya38 tribute songs』
[収録曲]2010.08.25 Release!! 01. コンコルド 02. boomerang 03. 隼 ¥1,200(tax in) OPCD-3101 pojjo record |





