Maltine Recordsを知っているだろうか。 現在、若干21歳のDJであるtomadが中心となって運営し、今徐々に浸透しつつあるインターネット・レーベルである。今までアナログやCDのリリースを行わず、MP3のフリーダウンロードという形態を取ってきた。この『MP3 killed The CD star?』はそんな彼らの初の有料でなおかつCDパッケージでのコンピレーション・アルバムだ。
と、一通り説明したが、肝心のMaltine Recordsの音楽性はどうなのか。 あえて一言で言うとすれば、オタク・ミーツ・クラブミュージックだ。それもテクノ、ヒップホップ、ダブ・ステップなど本当に雑多な。しかし、どうだろう。クラブミュージックはファッションとつながりが深く、オタクと聞いて違和感を覚える人もいるかもしれない。でも、これはある面から見れば自然な流れなのだ。まず、ダフト・パンクなどテクノのアーティストには日本のアニメが好きは多いし、90年代後半のテクノにはアニメやCMなどから縦横無尽にサンプリングするナード・コアというジャンルもあった。 90年代以降のテクノに決定的な影響を与えたAphex Twinはテクノの持つ暴力性と幼児性を極端なまでに表現していたが、そのセンスを受け継ぎ00年代にブレイクコアで大暴れしたkid606はやはりアニメ好きとして有名だ。 あらゆる局面でアニメとテクノは親和性が高い。
そして、Maltine Recordsの音楽はそんなテクノの流れに加えて、今新たな爛熟期を迎えている日本のヒップホップの流れにもある。昨年からブレイクしているS.L.A.C.KならびにPSG、最近ではSimi LabのQNなどヒップホップでは20歳そこそこの才能が注目されているが、彼らの音楽は日本語ラップを踏まえつつ、その枠内に留まろうとしない自由なものだ。しかも、上の世代のサイプレス上野とロベルト吉野や環ROYらのように試行錯誤してそこに辿り着いたというよりは、もっと自然体で最初からシーンなどおかまいなしに自由。これは日本でヒップホップが音楽として日常的なものとして定着し、多様性が増してきたってことだろう。オタクネタと同時にヒップホップらしいビートも鳴らせるMaltine Recordsの面々もその多様な中のひとつなのだと思う。
Maltine Recordsの音楽は、これまで書いてきたふたつの流れが混ざり、PCにおける音楽制作技術の向上やインターネット環境という土壌からできた果実のひとつだ。この『MP3 killed The CD star?』にはオタクっぽい特徴的なサンプリングを使っている曲はないが、あえて有料でそんなコンピレーションを出すことに彼らが自分たちのカルチャーを広めていこうとする気概を感じる。是非、このフレッシュ&カオティックな音楽に触れてみて欲しい。
(文 : 滝沢 時朗)




