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Dance / Electronic

2009 12 02 UP

世界を席巻するダブステップ・ムーブメントの最左翼に位置する2562のニュー・ディメンション・サウンドをもう聴いたか。


ダブステップが、そのネクストが、いま動いている。それは間違いなく、現在、最高にエキサイティングなクラブ・サウンドである。
「そしてダブステップとグライムは、それなりの実績をほこるUKクラブ・カルチャーの系譜において現在もっとも最良な結実であり、いまもっとも評価されてしかるべきジャンルである」 (ガーディアン)
そう、たったいまこの音楽を聴かずしていつ聴くというのだ。ハウスにしても、テクノにしても、ドラムンベースにしても、この手のクラブ・サウンドには必ず“旬”というものがあり、それは決して、後から追体験がきかないのである。だから僕は、ここ2~3年はカネさえあれば、優先順位としてまずダブステップを選んでいる。
ゼロ年代初頭、ロンドンの南郊外にある住宅街、2ステップの発展型としてクロイドンで誕生したダブステップは、それなりに時間をかけて多様化している。2007年には、シャックルトンの「Blood On My Hands」をこの国でも人気のテクノDJ、リカルド・ヴイラロボスがリミックスを手掛け、ずいぶんと話題となったが、それ以降の多様化と広がりはそれどころの騒ぎではない。2009年は、エレクトロ・ガール・ムーヴメントの顔役、ラ・ルーの「イン・フォー・ザ・キル」のリミックスをスクリームが手掛け、それが大ヒットしてしまった。お陰でスクリーム(とベンガ)のグラストンベリー・フェスティヴァル出演が決まり、いよいよダブステップがUKで最高の野外フェスに登場するということで大きなニュースとなった。また、ブリアルが卒業した高校の後輩たちによる19才のバンド、ザ・XXがヤング・マーブル・ジャイアンツのファーストを思わせるその素晴らしいデビュー作において、ダブステップからの影響を取り入れていることも話題となっている。2008年、ブリアルはマーキュリー・プライズにノミネートされ、2009年、カスパはダブステップの新たなスターとなった。ダブステップは『ガーディアン』が言うように、「いまもっとも評価されてしかるべきジャンルである」。
 2008年にリリースされた2562のデビュー・アルバム『エアリアル』は、シャックルトンの「Blood On My Hands」に次いで、ダブステップの多様化を印象づけたという意味で、エポックメイキングなアルバムだった。オランダのハーグ(アムステルダムから電車で4~50分の町)を拠点とするデイヴ・ハイスマンスは、テクノ・シーンにおいてもっとも影響力のあるベルリンのミニマリスト、ベーシック・チャンネルのダビーな質感をダブステップのフレームワークに取り入れたとして高く評価されたのである。そしてそれは、同じオランダのプロデューサー(現在はUS在住の)、マーティン(Martyn)とともにデトロイト・テクノとダブステップの融合を早めたのである。
 こうしたテクノ/ハウスとダブステップとの融合、もしくは混合は、2562の作品をリリースするブリストル(ダブステップにおける第二の故郷)のテクトニック(Tectonic)、あるいは同じくブリストルのパンチ・ドランク(Punch Drunk)によって以前から着手されている。ピンチによるテクトニック、ペヴァーレリストによるパンチ・ドランクはともにゼロ年代半ば以降のレーベルで、急速に展開を早めるダブステップの最初の目印ともなった。パンチ・ドランクはそれから、ロブ・スミス(スミス&マイティ)によるダブステップ・プロジェクト、RSDの作品を通してレゲエとの融合を深めると同時に、90年代のブリストル・サウンドとの接続も果たしている。
いっぽうテクトニックは、2009年には、LAエクスペリメンタル・ヒップホップの注目株、フライング・ロータスとブリストル新世代を代表するジョーカー(ダブステップとG・ファンクの融合者、次期スター候補)とのスプリット・シングルを発表している。なんだかブリストルという町は、いまではすっかりダブステップの実験場のようである。
 そしてテクトニックは、2009年もまた、2562による決定的なシングルを発表している。それが、今回のセカンド・アルバムのクライマックスにもなっている「Love In Outer Space」だ。このシングルは、僕にとって2009年のベストの1枚でもある。それは聴いてすぐさま、全盛期のホアン・アトキンスのコズミック・ファンク、カール・クレイグのフューチャー・ジャズ――そう、デトロイトのテクノ・マスターたちのサウンドを想起させる音だ。つまり、2562の新境地は、1991年から1994年にかけて主にヨーロッパ全土で吹き荒れたテクノ・ムーヴメントにおける綺羅星たちの音楽ともに似た感覚が、より際だっているのである(アルバムに未収録となったもうひとつの収録曲“Third Wave”にいたっては、ダブステップというよりも“デトロイト・テクノ”である)。
2562によるその素晴らしい12インチ・ヴァイナルのリリースの数ヶ月前には、マーティンによる最初のアルバム『Great Lengths』が彼自身のレーベル、3024から発表されている。それもまた、デトロイト系ダブステップだった。また、「Love In Outer Space」とほぼ同時期には、NY在住のステッパー、フェイルティ・DLによる最初のアルバム『Love Is A Liability』がプラネット・ミューから出ている。そして、オーストラリアにおける最初のダブステップ・レーベル、アクアティック・ラボが初めてのコンピレーションCDをリリースしている。それらの新しいダブステップを聴けば、もはやこの音楽が“ダークで内向的なUKガラージの子供”ではないことがわかる。雑食性はさらに強まり、テクノ、ハウス、ダブ、ダウンテンポ、エクスペリメンタル……それらが混在している。僕の耳にはこれらは“新しいテクノ”に聴こえる。
 何はともあれ2562は、ダブステップのネクストが活発に動いているこの時期に、セカンド・アルバム『アンバランス』を発表する。それはまさしく、多様化し、次の展開を見せているダブステップ・シーンそのもののような内容である。僕は、アルバムの“Intro”から“Flashback”を聴いて早速やられた。これは想像上の旅を促す、まさに“新しいテクノ”である。“Like A Dream”やタイトル曲の“Unbalance”、“Who Are You Fooling?”などは、メアリー・アン・ホブス監修による人気コンピレーションの第三弾『Wild Angels』がそうであったように、まるでエレクトロニカとの接合を果たしているようだ。“Lost”や“Superflight”、“Narita”や“Escape Velocity”のような曲は、2562の独壇場である。つまり『エアリアル』からの路線、ミニマル・テクノとダブステップとの華麗なる結合だが、以前にも増してアトモスフィックな響きを有している。それらはクラブで言うところの午前4時のトラックでもある。夜明け前の、深い時間に効力を発揮する音楽だ。こうしたトラックは、これからどんどんテクノ/ハウスのDJたちの手に渡り、ダンスフロアに浸食していくであろう。
『アンバランス』は、先行シングルの「Love In Outer Space」がそうであったように、コズミック・テイストに特徴を持つ。
かつてデトロイト・テクノのマスターたちが得意とした宇宙旅行が、ダブステップという新しいフレームワークのなかで再生されているのだ。
(文:野田 努)
   
2562-twenty five sixty two-

ブリストルの"DJ Pinch (DJピンチ)"が主宰する"Tectonic (テクトニック)"が送り出すオランダ人アーティスト"Dave Husimans (デイヴ・フシマンズ)"によるプロジェクト。

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